岩倉孔介のブログ

ピアニスト岩倉孔介の活動報告など

「オンラインレッスン」を考える

今回のコロナ禍で、音楽教室音楽大学はオンラインレッスンの可能性を探っています。僕の勤める大学も、母校の大学も、そして僕が運営している音楽教室もオンラインレッスンを始めました。

そこで、オンラインレッスンについてはその是非について様々な意見があることは承知のうえ、この状況下においてどのような目的をもってオンラインレッスンに取り組むべきなのか、自分なりに考えてみました。

 

まず前提としては、もちろん可能であれば対面レッスンの方が優れています。しかし現在では僕が子供の頃には考えられなかったようなスムーズなビデオ通話が、しかも無料で提供されています。この状況下、僕はやはりこのテクノロジーを積極的に利用すべきと思います。

 

定期的に先生の前で演奏しなければならない、というプレッシャーが練習のモチベーションに繋がる

これが最大の目的と思いますが、僕が学生の頃を思い出しても、レッスンが無いとどうしても練習に身が入りません。人間は弱いので、「レッスンがある」という事自体がその内容以上に意味を持つ事も多いでしょう。

特に音楽は継続こそ力なので、ここで立ち止まる事は大きな危険があると思います。

ちなみに僕は学生が終わって日本に帰るまで、やはりモチベーションの維持のためにコンクールやコンサートで「練習しなければならない状況」を常に作っていました。振り返ると長い人生のうちのほんのひと時なのですが、これをやっていなかったら僕は今音楽をやっていなかっただろうなと思います。

 

これに関連して思いついたのが、

・生徒に演奏を録画してもらって、限定公開で見せ合う。コメントしてもらう。

Web弾き合いはzoomでもできますが音質的にはyoutubeなので、もしこの状況がもっと長引いたらタイミングを見計ってやってみたいです。自分がコンクールを受けていた頃はDVD審査が多かったので、撮り直しを何度もしながら作るあの独特の緊張感はきっと良い勉強になります。録画できるまで練習することは、コンクールのモチベーションにもかなり近いと思います。

 

的を絞って取り組む

現在までオンラインレッスンをしてみて感じた事は、響きやダイナミクスについてはわかりづらいけれど、テンポやフレーズのまとまり、呼吸などはしっかりわかるという事です。

対面レッスンができるようになるまで、ビデオ通話でわかる部分に集中して取り組む事で、逆に問題の焦点が絞れて良くなる部分も多いです。

もちろん対面レッスンが可能になった時に不足を補わなくてはなりませんが、テンポやフレーズ感などの土台となるものがしっかりしていれば、その後のレッスンの効果も大きいのではないかと予想しています。

 

テクニック、読譜の事

上記と関連しますが、有効なテクニックを探る回も良いと思います。姿勢から見直して、特に難しい部分を攻略する方法を探ることは、オンラインでも難しくありません。

またもしくは、とにかく初見をしたり、そのレッスンで初めて見る曲を一緒に読譜するのも良い勉強になると思います。効率の悪い読譜方法を見直す事で、今後の勉強の大きな手助けになります。

 

思い切って座学をする日を作る

曲の構造や背景がわかれば、演奏の仕方がわかります。僕が学生の頃は、実技の先生に新しい曲を持っていく前にレポートを書かなければなりませんでした。僕の生徒にも、必要な時は簡単なレポートを書いてもらう事があります。

ならばせっかくのこの機会に座学を取り入れ、双方向で曲の構造や背景について話し合うのはとても有意義だと思います。生徒が分からなかった事やおざなりになっていた事を、こちらも知れるチャンスです。

また普段レッスンの中ではなかなか話す時間の無い、もっと全般の歴史の事、文化の事、演奏家の事など、演奏の興味を呼び起こす内容はたくさんあると思います。

 

 最後に、いつもと違う事を受け入れるべきと思う

工夫するとオンラインにもたくさんの可能性があると思いますし、「いつもと違う事」を受け入れて「いつもと違う事」をする勇気が必要と思います。生徒に対して使う言葉も変わるだろうし、レッスンの目的そのものも変える必要があると思います。

今まで通りを目指すと難しい事があっても、まったく新しい事を取り入れて可能性を探る事で、生徒にも僕たちにも新しい視点や新しい表現を呼び起こす良い機会になるのではないか、と考えながら、今年は5月からの新学期の準備を進めています。